べき乗分布

べき乗分布は、正規分布などとは異なり、裾野の厚い(ファットテール)分布と知られ、所得の分布、本の売り上げ、銀行口座の貯蓄金額など様々んところに出現することが知られています。

べき乗分布の定義

べき乗分布(power law)は、[latex]\gamma[/latex]をパラメータとして、以下で定義されます。

[latex size=2]f(k)=P(X=k)=Ck^{-\gamma}\propto k^{-\gamma}[/latex]

 

ここで、Cは規格化定数である。

べき乗分布の特徴的なことは、両対数グラフでは分布が一次関数(直線)になることです。

このべき乗分布に関する、規格化定数、期待値、分散などを求めるのは、微妙なところがあります。

べき乗分布の規格化定数

まず規格化定数からみていこう。分布の最小値をm、最大値をMとすると、

[latex size=2]\int_m^M f(k) dk = \frac{C}{\gamma-1}\Bigl(\frac{1}{m^{\gamma-1}}-\frac{1}{M^{\gamma-1}}\Bigr)[/latex]

 

規格化条件より、上の式の値は1となるはずである。ここで、注目すべきところは、分布の最大値Mである。もし、Mが無限大まで値をとる場合、指数[latex size=1]\gamma[/latex]が1以上でないと規格化することができません。

上式より、規格化定数は、

[latex size=2]C = (\gamma-1)\Bigl(\frac{1}{m^{\gamma-1}}-\frac{1}{M^{\gamma-1}}\Bigr)^{-1}[/latex]

 
となります。

べき乗分布の期待値と分散

べき乗則の期待値と分散を計算してみましょう。計算自体は上の規格化定数の時と同様で、

[latex size=2]E[X]=\int_m^M kf(k) dk = \frac{C}{\gamma-2}\Bigl(\frac{1}{m^{\gamma-2}}-\frac{1}{M^{\gamma-2}}\Bigr)[/latex]
 

[latex size=2]V[X] = \int_m^M k^2f(k) dk – (E[X])^2 \\ ~~~~~~~= \frac{C}{\gamma-3}\Bigl(\frac{1}{m^{\gamma-3}}-\frac{1}{M^{\gamma-3}}\Bigr)- (E[X])^2[/latex]
 

となります。ここで、注意すべきことは、分布の最大値Mが無限大になったとき、期待値の場合は指数[latex size=1]\gamma[/latex]が2以上、分散の場合は指数[latex size=1]\gamma[/latex]が3以上でないと、期待値、分散発散してしまいます。

べき乗分布の規格化定数、期待値、分散が存在するための条件

つまり、べき乗則では、分布の裾野(テール)のふるまいが、分布そのものの存在、期待値、分散が存在するかどうかに重要な役割を果たします。分布が厚くなってくるにつれて(つまり、指数[latex size=1]\gamma[/latex]が小さくなってくると)、まず分散が無限大に発散して存在しなくなり、そのあとに期待値が存在しなくなり、最後に分布そのものが存在しなくなります。まとめると、分布のテールが無限大まで伸びている場合(Mが無限大の時)、以下のようになります。

(1) 指数 [latex size=2]\gamma > 3[/latex] の時、期待値、分散が有限

(2) 指数 [latex size=2]3> \gamma > 2[/latex] の時、期待値有限、分散は発散

(3) 指数 [latex size=2]2> \gamma > 1[/latex] の時、期待値、分散両方とも発散

(4) 指数 [latex size=2]1> \gamma [/latex] の時、分布そのものが存在しない。